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リアリティー・ガール・フレンド

 

1.偽りの恋

俺は最近、Twitterを始めた。その名も「嵺(れう)」。最近の俺は絶好調で、

 

リアリティーがある毎日を過ごしている。家族もいる。友達もいる。彼女は...いない...

実を言うと、つい最近波のように引いていったばっかりだ。

 

まぁ、居ても居なくても、友達や家族が居るからいいんだ。

 

中学2年生で彼女ができる方がすごいと思う。

この恋は偽りの恋だったんだ。

 

 

彼女が居なくなってからの俺の人生ときたら、とんでもない物へと変わっていく。

 

当時、野球だけが取り柄だった俺は中学3年の頃、高校の進学希望で推薦を貰おうと

 

先生に相談したところ、「お前に未来を選択する自由はない」と言われ、

 

やっとの思いでFラン高校に入学、そこからも中学のツケが回ってきて、

 

成績は下から数えたほうが早く、それでも留年だけは避けてきた。

 

 

 

2.出会い

 

勉強もせず、携帯を弄る毎日。外からは塩っぱい匂いと生暖かい風が吹いている。

 

するとバイブレーション鳴り、今までの黄昏が一気に吹き飛んだ。

 

「おめでとうございます!今日でTwitterを始めて2年が経ちました!これをツイートして、

 

お祝いのメッセージを貰いましょう!」

 

これをキッカケに俺は、学校でも、家でも、なにかあるとすぐにツイートをする

 

「ツイッター廃人」いわゆる「ツイ廃」になっていた。

 

Twtterをやっている人の中には、出会い目的で媚びてくる奴もいるわけだ。

 

俺はそういうのには一切の興味を持たなかった...あいつ以外は。

 

3.キーホルダー

俺はもう、リアルで彼女を作るつもりはない。リアルでは...

 

今のネットは便利だ。彼女だって彼氏だって、作ろうと思えばコンビニのように手軽に作れる。

 

俺は、Twitterの他にもツイキャスという配信アプリで活動をしている。

 

YouTube勧めれたこともあったが、乗り気にならない。3年前のあいつのせいだ。

 

現に俺も、何回か告られたことがある。そのほとんどが声や顔が目的だった。

 

今の世代は顔が重要だとか言っているユーザーもいるけど、俺は反対派だ。

 

俺は人を顔で判断する人は好きではない。

 

こんなフレーズを聞いたことがあるだろうか。

 

「顔が理由で付き合った人は、顔が原因で別れる」

 

俺はこの言葉を気に入っている。

 

そんな意思があって、DMで告白してきた人は全員を断っている。

 

振るのも勇気いるし、罪悪感がある。こんなことをいう俺は変だろうか?

 

俺は、彼女にもらったキーホルダーを、机の引き出しから引っ張り出し、

 

ギュッと握りしめた。街灯が輝く街並みの奥では、潮の満ち引きが永遠に続けられている。

 

俺らも永遠に続けばよかったのに。 

 

(なんであいつは...あいつは、離れて行ってしまったんだ...) 俺は今でも思う時がある。

 

(好きな人が他に出来たなら、せめて一言言ってくれよ...) 勝手すぎるんじゃないか?

 

そんな、らしくない言葉が浮かんだ。

 

俺はよく友達に、「変わってるね」と言われる。

 

だから、いつも自分が言っていることが本当に正しいのか、よく判断して発言しているつもりだ。

 

 

4.視線

 

俺は学校で好意を持たれたことがない...はずだ。

 

ただ最近、授業中や休み時間、いつも誰かの視線を感じながら生活することが続いた。

 

ただ、視線の正体はすぐにわかった。3年前のあいつだ。

 

(俺からなにも言わずに離れていったくせに。)疑問から怒りへと感情が変わりそうになった。

 

すると、

 

「お前、あいつのこと好きなんか?」

 

隣のクラスの向井 サトル(通称むーさ)だ。

 

「!?...んなわけないじゃん...」

 

「正直になれよ!確かにあいつ、かわいいもんなぁw」

 

「ぅ...うるせぇよ...」

 

「なんでお前が照れてるんだよwまさかお前っ!」

 

「うるせぇよ!!!」

 

周りから一気に視線を浴びる。

 

気づけば自分でもビックリするくらいの大声を出していた。

 

やってしまった。

 

(だから発言する内容はちゃんと考えてからにしないといけないと...自分で決めたのに...)

 

こうやって俺はいつも人を困らせる。俺の悪いところだ。

 

「お...なんかゴメンな。まぁ、頑張れよ」

 

そう言って俺の肩をポンと叩いてむーさは教室を後にした。

 

もう慣れてしまったのだろう。これで何回目だろう...指で数えられないほどになっていた。

 

 

5.男

学校は今、文化祭に向けての準備に追われていて、生徒会に所属している俺は、

 

企画の考案を頼まれていた。ただ、俺は企画を考えるのが大の苦手で、

 

今回もむーさに手伝ってもらうことになっている。いつものエントランスで待ち合わせだ。

 

ガラス張りのエントランスには、建物の内側に向けてオレンジ掛かった俺の影が伸びる。

そこへ息を切らしながらむーさが走ってきた。

まずはこの前のこと、謝らないと...

 

「むーさ。この前は急に怒鳴ったりしてごめん。」

 

「いきなりかよw 大丈夫だって。それより上手くいけよ?w」

 

「おい!w」

 

むーさは陽気なやつだ。女子からの人気はそこそこだが、あいつの周りにはいつも人がいる。

 

「文化祭に出す企画でいい考えが思いつかなくて、案を出してもら...」

 

あいつがいる。俺は思わず話を途切らしてしまった。気づいても話を途切らすべきではなかった。

 

お陰でむーさにも気づかれてしまった。

 

だが、むーさはもう何も言わなかった。

 

俺はむーさの優しさに感謝するとともに、あいつの隣に居る男が気になって仕方がなかった。

 

 

6.正体と招待

 

その日から俺は、視線を出す側になっていた。あの出来事を見てからというもの、

 

あいつからの視線は感じない。今度は俺のほうが気になって仕方がなくなっていた。

 

相手は気づいているのかいないのかわからないが、こちらに視線を向けることはもうない。

 

観察しているうちに、相手の男についてだんだんわかってきた。

 

相手は俺も知っている有名Twitter主の蝶水(ひすい)。

 

ひすいはリアルでも女子に人気があり、恋愛経験も豊富にあるという。

 

ただ、あいつとは付き合って無いらしい。

 

たまたま忘れていた教科書を教室に取りに行った時、俺は女子たちのある噂を耳にした。

 

「ひすい君って知ってる?」

 

「知らないわけないじゃんw」

 

「だよねwひすい君さ、最近また彼女できたらしいよ?」

 

「マジで!今度こそはって狙ってたのにー! 誰なの?」

 

「わからいんだけど、ネットらしいよ?」

 

「この学校じゃないんだ。そっか...」

 

と、言うことは、ネットの世界に紛れ込んでいない叶恵とは無関係というわけだ。

 

(ひすいと叶恵は同じ部活だし、一緒に居ても違和感はないか...)

 

そのことがわかって何故か安心した。

 

それからしばらくして、企画の打ち合わせと題して、集会に招待された。

 

 

7.集会と秘密

 

生徒会には約30名の部員が居る。その中に俺の知っている人はひすいくらいしか居ない。

 

普段はあんまり喋らないし、喋っても趣味が合わないから盛り上がらない。

 

ただ、今回ばかりは喋らないと、俺の気持ちが落ち着かない。

 

「よぉ、ひすい。」

 

「お、久しぶりやん。」

 

「お前さ、最近彼女できたろ」

 

「え、なんで?」

 

ひすいは目を見開いた。

 

「そりゃ、お前の浮かれ気分見てればわかるさ」

 

「俺...最近別れたばっかりなんよ。」

 

俺はギョッとした。じゃああの話はなんだったのだろう。俺は話を進めた。

 

「え、ネットで彼女作ったんじゃないの!?」

 

「なんで知ってるん...?」

 

しまった。どうしよう。素直に言うしか無いのだろうか。

 

素直に言えばあいつのことも話してくれるのだろうか。

 

「俺、クラスの女子達が話しているのを聞いちゃって。」

 

「そっか...」

 

ひすいは悲しそうな声で言った。

 

それに続けてあの質問をした。

 

「最近お前、叶恵と一緒にいるよな?どう思ってるの?」

 

「...」

 

なんかある。あいつにはなんかある。

 

「そんなに言えないことなの?」

 

「今から話すこと、みんなには秘密にしといてくれる?」

 

俺はその話を聞いた瞬間、叶恵を守らなければいけないと思った。

 

 

8.本

 

本に目覚めた。今ハマっている本は、「フレンドリー・エンドゲーム」

 

そぅ遠くはない日

 

彼らはまた出逢った

 

何も知らない2人は共に歩みを進め問いかける

 

あなた...もしかして...

 

あらすじから、惹かれるなにかに出会って本を読み始めた。

 

ただ、本を読んでいても、あいつのあの時の衝撃的な発言が耳に残る。

 

『「俺、実はあいつのことが好きなんや。」

 

「え...理由は」

 

「あいつ金持ってるやん?美人だし将来売れるんやない?」

 

「まさかお前、そんな理由でっ!」』

 

会話を思い出しながらも、気づけば10刊全部を読み終えていた。

 

9.ひすい

 

衝撃的な発言を聞いた時から1週間が経った。

 

俺はあいつを守るべく、話をするため、あいつをいつものエントランスに呼び寄せた。

 

ただ、いつもと様子が違う。どこかから視線を感じるのだ。

 

「急にごめんな。呼び出しちゃって。」

 

「うん。で、どうしたの?」

 

叶恵は俺の目を見ようとしない。

 

「お前さ、ひすいのこと、好きなんか?」

 

俺は単刀直入に聞いた。

 

「え...?」

 

叶恵は驚いたような目をしてこちらを見た。

 

「お願いだ、あいつとは付き合わないほうがいい。」

 

「なんでそんなこというの?」

 

「あいつ、お前のこと、金でしか見てないんだ。

 

美人だし金もいっぱいあるから将来めっちゃ稼げるとか言ってたし!」

 

思えば早口になって必死で説得をしていた。

 

「そうだったんだ。うん。ありがとう。教えてくれて。」

 

その時、窓ガラスが割れる音がした。

 

「貴様、よくも裏切ってくれたな!!!!!」

ひすいだ。凄まじい怒りが眉の辺りに這っている。

 

叶恵は血の気が引いているようだった。

 

「逃げて!」

 

叶恵は俺の腕をひっぱり走り出した。が、ひすいはだ。

 

必死になって逃げたが、すぐに捕まってしまった。

 

「絶対に、許さんからな。」

 

そう小声ではっきりと言われたのを最後に、俺は意識を失った。

 

 

10.病院

 

「ここは、、、」

 

そこは、辺り一面が真っ白く、ふわふわとしている。

 

(俺は、死んだの...か?)

 

耳からは、一定のテンポで鳴り止むことを知らない、電子音だけが聞こえる。

 

それから目を開けると、そこには俺の腹で上半身を横たわらせて寝ている、叶恵の姿があった。

 

俺はそれから、何事もなく退院し、ひすいは退学処分となったそうだ。

 

しかし、あれからというもの、叶恵の姿を見ていない。

 

 

11.告白

 

それから叶恵は、あの時のショックで、部屋から出てこないという。

 

俺はまた、Twitterを開いた。今度は叶恵に向けて、届かないメッセージを何回もツイートした。

 

すると、一つのツイートに返信が来た。

 

「私もこの前、大切な友達が殴られ、入院し、それがトラウマになってしまって...

 

よかったら話を聞いてくれませんか?」

 

俺はすぐに、いつもは開かないDMをすぐに開いた。

 

その人は俺と環境が似ている。

 

そして、俺と状況も似ている。

 

話しているうちに、SOSを聞く以外にも、お互いのことも話すようになっていた。

 

そしてある日、相手から一通の連絡が。

 

「あの、私でよかったら付き合ってもらえますか?」

 

俺はネットで媚びるてくる人は嫌いだ。ただ、この人は嫌いになれなかった。

 

「......いいですよ。」

 

 

12. 叶恵

 

半年後、自分たちの趣味ついて話しているうちに、波のように心が満ちていく2人は、

 

いてもたっても居られず、会う約束をした。

 

こんなことは初めてだったので、俺もかなり緊張していた。

 

待ち合わせの時刻は過ぎていた。

 

彼女はまだ来ない。

 

なにかに巻き込まれたのか?

 

忘れているのか?

 

すると、後ろから声が掛かった。聞いたことがある。この声、どこかで...

 

恐る恐る後ろを振り返ると、そこには叶恵が居た。

このストーリーは、@mryabi__reu

によってあらすじが構成されました。

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